SES契約(準委任契約)とは?派遣契約との違いやSES企業を利用するメリット・デメリットを解説

SES契約(準委任契約)とは?

SES企業とは、System Engineer Service(システムエンジニアリングサービス)の略で、エンジニアの技術をクライアントに提供することで、その業務遂行に対して報酬を得る仕組みを持つ企業を指します。この契約形態は派遣契約や請負契約とも異なります。契約の違いを理解し、「偽装請負」を防ぐことは、エンジニア採用担当者にとっても重要なポイントです。

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エンジニアの採用が難しいことも重なり、SES企業の存在感はますます大きくなる中で、メリット・デメリットを把握して適切な活用方法を検討してみると良いでしょう。

SESとは何かを基礎から解説

SESとは、主にインフラ環境の構築やwebシステムの開発、アプリケーションの品質保証や、LLMといった機械学習など、知見やリソースを必要とする企業が、そのニーズに応じた特定のスキルを持つエンジニアを派遣してもらうビジネスモデルです。

SES契約とは、エンジニアの専門知識や技術力を基に作業時間に応じて報酬が支払われる仕組みです。特徴としては、「成果物の納品」に対してではなく、労働そのものの提供に対して報酬が発生する点です。即戦力となる人材を迅速に確保できるため、クライアント企業にとって効率的な契約形態といえます。

SES契約(準委任契約)がIT分野で採用されやすい理由

IT業界においてSES契約が広く採用されている背景には、技術者の需要と供給のギャップが常に存在することが影響しています。特に、IT分野では新技術やトレンドに対し迅速な対応が求められるため、企業は即戦力となるエンジニアを確保する必要があります。このような中で、SESという契約形態は企業とエンジニア双方にとって利便性の高い選択肢として重宝されています。

SES契約(準委任契約)と他の契約形態の違い

SES契約は、他の契約形態とは明確に区別されています。たとえば、派遣契約や請負契約と比較すると、報酬の支払い方法や責任範囲において違いがあります。これらの違いを把握し、適切な契約形態を選択することが重要です。さまざまな契約形態・雇用形態についてその種類や内容を解説します。

SES契約と派遣契約の違い

SES契約では、エンジニアはクライアント企業に常駐し、指定された業務を遂行する形が一般的です。この際、エンジニアの作業場所が発注先だとしても、エンジニアに対する業務指示や命令権は所属している契約元の会社に限定されており、クライアントから直接指示を受けることはできません。契約元が管理監督者を立てて、エンジニアはその監督者から指示を受ける形になります。

これに対して派遣契約では、派遣先企業がエンジニアに直接指揮命令を行う形態となります。こちらが派遣契約との最も大きな違いと言える点です。

SES契約と請負契約の違い

SES契約と請負契約の主な違いは、成果物に対する責任の取り扱い方にあります。SES契約では、スキルや知識を提供することが中心であり、契約者は成果物のクオリティに関係なく自身が作業した時間に基づいて報酬を得ます。

一方、請負契約は成果物の納品を前提としており、契約者が明確な責任を持ちます。この場合、不良品や納期遅延が発生した際には、納品者がその対応を求められることが一般的です。請負契約においては成果に対する期待値が高く、プロジェクトごとに求められる要件や目標が明確であるため、特定の課題解決や専門性の高いプロジェクトに適した契約形態といえるでしょう。SIer(システムインテグレーター)といった業態で使われることの多い契約形態となります。納品に対して報酬が支払われるのに対し、準委任契約は、おおくが月単位での作業時間で支払いが発生するのが一般的です。

SES契約(準委任契約)と委任契約の違い

委任契約の目的は法律行為の遂行または遂行による成果となります。これに対して、準委任契約は法律行為ではない事務を委託する契約です。このため、SES契約においてエンジニアが提供する業務内容は通常法律行為を含まないので、準委任契約(以下記事中はSES契約)に該当します。

業務委託契約とは?

一般的に上記で述べた「準委任」「請負」「委任」の契約を総称して、「業務委託契約」と呼びます。

SES契約を結ぶ3つのメリット

SES契約には、必要な時に即戦力となる人材を柔軟に確保できるなどさまざまなメリットがあります。主なメリットについて説明します。

①柔軟な人材の確保が可能

SES契約の主なメリットとしてまず挙げられるのは、柔軟なリソース管理が可能である点です。プロジェクトの進行状況に応じて人材の必要量を適切に調整できるため、無駄な人件費を削減し、業務の効率化を図ることができます。さらに、必要なスキルを持つエンジニアを決められた期間で活用することで、特定の課題や一時的なプロジェクトの需要に対応できるのも大きな利点です。

②企業側のリスク軽減

SES契約は成果物そのものに対する責任を負う契約形態ではないため、企業側のリスクを軽減することができます。エンジニアの提供する専門的なサービスに集中することで、プロジェクト全体の進行を柔軟に調整しやすくなる点もメリットの一つです。この契約形態を効果的に活用することで、企業とエンジニアの双方がメリットを享受し、効率的かつ価値のある関係性を築ける可能性が高まります。

③教育コストやリソースの削減

SES契約を活用することで、企業はエンジニアの教育や育成にかかるコストを大幅に削減できます。自社内でプログラミングやITスキルを持つ人材を育成するためには、時間や設備投資が伴いますが、SES契約ならば外部から即戦力のエンジニアを確保できるため、こうした負担を軽減できます。また、企業は必要なスキルを持ったエンジニアを即座にプロジェクトに参加させることができるため、スピーディな業務遂行が可能になります。この結果、教育やトレーニングによるリソースの浪費を避けることが可能です。

SES契約を結ぶ3つのデメリット・リスク

SES契約には多くのメリットがある一方で、プロジェクトとの適合性などのデメリットも存在します。主なデメリットやリスクについて説明します。

①契約期間中にプロジェクトが完遂しないことがある

SES契約では、契約期間中にプロジェクトが完遂しない場合があります。その要因にはエンジニアのスキル不足、進捗管理の不備、そして仕様変更などが考えられます。これらの問題が原因でプロジェクトが遅延すれば、契約の延長が必要となり、追加の費用が発生することになります。このリスクを避けるためには、あらかじめ余裕を持った契約を結び、また進行状況を常に把握できる管理体制を整えておくことが重要です。

②直接的な指示や指導は不可

SES契約には、指揮命令権の管理に関するリスクが伴います。特に、SES契約を通じて雇われたエンジニアに対し、企業側が直接指示や技術的な指導を行うことは制限されています。これは、実施される指示が契約会社を通じて行われるためです。どのような行為がこの違法行為に該当するかについては、厚生労働省による「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」が示されています。SES契約のエンジニアを常駐させる場合には、派遣契約との違いを理解することが重要であり、知らず知らずのうちに契約違反を引き起こしてしまうケースも少なくありません。適切な契約運用のために、厚生労働省のガイドラインを再確認しておくことが推奨されます。

③認識にズレが生じる可能性がある

契約内容が明確でない場合、双方の認識にズレが生じることがあります。業務の範囲や成果の評価基準が不明確であると、依頼者と受託者の間に不一致が生じやすくなります。さらに、業務に対する指示やフィードバックが不十分な場合、誤解が生まれる可能性もあります。これにより、受託者が依頼者の求める成果と異なる方向に進むことがあり、結果として納期遅延や品質低下につながることもあります。したがって、契約時には詳細な条件を定め、双方が同じ理解を持つことが特に重要です。

SES契約における適切な管理方法・偽装請負にならないために

SES契約を効果的に管理するためには、さまざまな視点からのアプローチが不可欠です。特に、業務の進行状況や成果に対するフィードバック体制を整えることは、適正な管理を実現するための重要な要素です。具体的には、エンジニアがどのような業務を遂行しているのかを定期的に確認し、業務内容を適正に明確化することで、効率的な進行状況の把握が可能となります。また、業務に対して適正な目標設定を行い、進捗を管理することで、予定通りの成果を実現する可能性を高めることにつながります。

指揮命令の際に注意すべきポイント

SES契約においては、契約したエンジニアに対する指揮や命令は、基本的には受注会社から行われるべきですが、実務上では発注先企業からの直接的な指示が混在する場合があります。そのため、エンジニアに対してどの範囲で指揮命令が許可され、責任の所在がどこにあるのかを事前に明確にしておくことが重要です。

さらに、エンジニアが直接発注先とコミュニケーションを取る際には、予め許可を得ておくルールを設けるべきです。この点への注意が欠けると、トラブルが発生する可能性が高まります。指揮や命令に関わるルールを事前に共有し、徹底することで、業務をよりスムーズに進行させることが可能となり、長期的な信頼関係を築くことにも繋がります。

偽装請負と認定された場合の罰則は?

偽装請負とは、形式上はSES契約を結んでいるものの、実際にはクライアントがシステムエンジニアに対して指揮命令を行うような状況です。このような実態があると、労働者派遣事業法に抵触することになり、違法行為として罰則やトラブルが発生する可能性が高まります。

もし偽装請負が認定された場合、委託元企業と受託企業の双方に1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されることがあり、企業名が公表されるリスクもあります。

まとめ

SES契約は、エンジニアを新たに雇用するよりも、費用やスキルなどの面で多くのメリットをもたらす可能性があります。

特に専門スキルを持つエンジニアの正社員雇用は高コストとなることが多いです。SES契約は、IT業界の人手不足が問題視される昨今、必要なスキルに対して効率的に投資できる点が大きな魅力です。

SES契約のメリットデメリットを理解して、より効率的で効果的な方法を模索しましょう。

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