エンジニアの採用は企業成長のカギを握る重要なステップですが、採用のプロセスは煩雑で時間も手間も要するものです。特に、技術進歩が著しいIT業界では、求める技術も日々変わっていくため、採用活動がうまく進まず頭を抱えているエンジニア採用担当者も少なくありません。
エンジニア採用を成功させるためには、苦戦する理由を把握し、事前準備をしっかりとしておくことが大切です。そこで本記事では、人事担当者が知っておきたいエンジニア採用の事前準備と採用の流れを詳しく解説します。
採用活動を行う前に確認しておきたいポイントや、実際の採用フローを効率的に進めるコツを紹介していくため、採用の道のりを少しでもスムーズに進めたい人事担当者は、ぜひご一読ください。
【目次】
エンジニア採用が難しい人事側の理由
エンジニア採用がうまくいかない場合で人事側に理由があるときには、以下のような原因が考えられます。
- エンジニアやIT業界の知識がない
- エンジニアスキルの見極めができない
- IT分野やエンジニア業務の基礎知識が分からない
それぞれについて、詳しく解説していきます。
エンジニアやIT業界の知識がない
エンジニア採用がうまくいかない理由の1つに、人事担当者にエンジニアやIT業界の知識がないことが挙げられます。求人欄の作成や技術者との面接をスムーズに行うには、人事担当者にも技術関連の知識があると有利です。
しかし、人事担当者が独学で技術の知識を獲得するのは容易ではありません。IT分野ではトレンドが絶えず変わり、流れに追いつきながら知識を増やしていかなければならないためです。さらに、エンジニアの専門領域は広範囲にわたり分野ごとに深い知識が求められるため、技術経験がない人事担当者にとって、候補者の話をすべて理解するのは難しいでしょう。
エンジニアスキルの見極めができない
エンジニア採用がうまくいかない理由の2つ目は、人事担当者がエンジニアスキルの見極めができないことです。エンジニアの職務経歴や履歴書からスキルを正確に評価できず、企業のニーズに合わない応募者を採用してしまうことで、採用のミスマッチが起こる恐れがあります。
例えば、履歴書に資格が記されていたとしても、その技術が企業の開発プロジェクトに必要なものであるとは限りません。また、資格が実務でどれほど役立つかも一概には言えないものです。そのため、人事担当者が企業の求めるエンジニアのスキルを深く理解していないと、採用後に齟齬が起こる可能性があるでしょう。
IT分野やエンジニア業務の基礎知識が分からない
人事担当者は、エンジニアの職務内容やIT分野の基本的な構造についての基礎知識を深めておきましょう。例えば、社内のエンジニアから直接情報を得るのが有効な方法です。実際に現場で働くエンジニアから、どのような技術が求められているのか、または職務の具体的な内容について話を聞くことで、リアルな状況を理解できます。
また、インターネット上にはエンジニアの仕事やIT業界をわかりやすく説明しているWebサイトも多数あります。例えば、技術系のブログや動画チャンネルでは、エンジニア業界の最新情報やトレンドが紹介されています。これらのリソースを積極的に活用することで、エンジニアの役割や必要とされるスキル、主要なプログラミング言語についての理解を深められます。
このように、さまざまなエンジニア職種の理解を深めることは、ニーズに合った人材を見つける第一歩です。それぞれの職種の特性や求められるスキルを把握し、効果的な採用計画を立てていくことが求められます。
人事が知っておきたいエンジニアに関連する知識
エンジニア採用を担当する人事担当者にとって、エンジニアに関連する知識を持つことは非常に重要です。特に、企業が求めるスキルや業務内容を理解し、効果的な採用戦略を立てるためには、基本的な知識が欠かせません。人事が知っておきたいこととして、以下の3つがあげられます。
- エンジニアの職種や役割
- プログラミングの関連知識
- エンジニアのキャリア観
それぞれについて、詳しく解説していきます。
エンジニアの職種や役割
エンジニアと一口に言っても、実際には多様な職種と役割が存在します。採用担当者は、これらの違いを理解し、自社のニーズに合った人材を見極める必要があります。
まず、エンジニアには多様な職種が存在します。例えば、ソフトウェアエンジニア、データサイエンティスト、インフラエンジニアなど、それぞれの役割は異なり、求められるスキルセットも様々です。企業は、自社のニーズに合致した職種を明確にし、その役割に必要な知識を把握する必要があります。
例えば、フロントエンドエンジニアは、ウェブサイトやアプリケーションのユーザーインターフェース(UI)を設計・開発する役割を担い、HTML、CSS、JavaScriptなどの技術を使います。一方、バックエンドエンジニアはサーバーサイドの処理やデータベース管理を担当し、システムの中核を支える重要な役割を果たします。Java、Python、Ruby on Railsなどの言語やフレームワークを使用し、システムのパフォーマンスやセキュリティを維持する必要があります。
プログラミングの関連知識
次に、プログラミング言語や技術スタックについての理解も求められます。例えば、PythonやJava、Rubyなど、人気のあるプログラミング言語を専門とするエンジニアのスキルを見極めるためには、それぞれの言語の特性や適用範囲を知ることが求められます。これにより、採用時に応募者のスキルを効果的に評価することが可能になります。
具体的な事例として、近年ではデータサイエンス分野の需要が高まっています。このため、Pythonのスキルを持ったエンジニアをターゲットにした求人を出す場合、Pythonがどのようにデータ分析に役立つかを明確に示すことで、より適切な応募者を引き付けることができます。技術担当者と協力して、必要なスキルセットや業務状況を詳しく盛り込んだ求人票を作成することも、効果的な採用手法の一つです。
さらに、人事部門が特定のフレームワークやライブラリ、開発手法についての理解を深めることで、企業文化やチームの雰囲気に合った人材を採用しやすくなります。また、エンジニア同士のコミュニケーションを円滑にするためには、共通の技術用語や理解を持つことが必要です。理解が深まることで、面接時に技術的な内容について具体的な質問ができるため、応募者の能力をより良く評価することができるでしょう。
エンジニアのキャリア観
エンジニアのキャリア観を把握することも、人事担当者にとっては重要です。エンジニアは、技術力の向上や経験が積めることを、特に重視しています。そのため、転職を考える際には、「技術力を高められる職場か」「成長の機会が豊富にある企業か」といった点に着目する傾向にあります。例えば、「最初の1年は営業職として働く」という人事戦略はエンジニアにはあまり好まれません。エンジニアの特性を適切に理解していないと、一般的な策を取ってしまい、優れたエンジニア人材を逃してしまいがちです。
また、近年では「リモートで勤務できるか」「勤務時間に柔軟性があるか」「副業が許可されているか」等、働く環境に関する要件も増えています。ワークライフバランスを重視するエンジニアが多く、趣味や資格取得の時間を確保しながら仕事を続けられる環境作りが、企業には求められています。エンジニアのキャリアビジョンや希望の働き方に適した環境を準備することが、エンジニア採用を成功させるための第一歩と言えるでしょう。
さらに、エンジニアはキャリアの選択肢として、技術的なリーダーシップを取るマネジメントパスを考えることも多いです。このパスでは、プロジェクトマネージャーやCTO(最高技術責任者)などのポジションがこれに当たり、より高い技術力と共にリーダーシップが求められます。効果的なチームマネジメントには、コミュニケーション能力が欠かせません。メンバーとの連携や目標設定、成果の評価を通じて、チームのパフォーマンスを最大限に引き出す能力が必要です。
人事が知っておきたいエンジニア採用の流れ
エンジニア採用は、以下の流れで進めていきます。
- エンジニアの採用市場を把握する
- 採用要件を明確にする
- 求人票を作成する
- 応募者の面接を行う
- 内定者のフォローを行う
それぞれの工程について、詳しくみていきましょう。
エンジニアの採用市場を把握する
まず、エンジニア採用の現場での競争状況や求人倍率を把握しておくことが大切です。エンジニア市場の情報収集は、採用活動を適切に進める上で欠かせません。現段階でエンジニアの人材確保がどれほど難しいかを理解すると共に、自社の強みを確認するためです。自社の特色を打ち出し他社との差別化を図るためにも、競合他社の動向を見ておきましょう。そして、得た知識を基に採用計画を立案し、実行に移していきます。
採用要件を明確にする
次に、求めるエンジニアの技術や人物像を明確にしていきます。ターゲット応募者のプロフィールを設定していきます。このとき、マーケティングで用いられるペルソナ設定と同様に、年齢や性別、居住地、職歴、収入、趣味や価値観までを含めた詳細なプロフィールを設定することで、より具体的な人材像を描き出すことができます。
ここで、ペルソナ設定を間違えてしまうと応募者が全くこないという事態を招く可能性があるため、注意が必要です。適切なペルソナ設計を行うことで、採用基準が定まり、効果的なアプローチが可能になります。また、採用を成功させるためにも、「採用したい人材」と「実際に採用できる人材」の双方を見極めましょう。
求人票を作成する
エンジニアの採用要件を決めたあとには、求人票を作成します。応募者が職場環境を具体的にイメージできるよう、情報提供を丁寧に行っていく必要があります。勤務地や時間、年収などを明記することはもちろん、開発環境に関する具体的な情報を提供することも大切です。福利厚生や職場環境の特色をアピールし、応募者の関心を引きつける内容にしていきます。
必要な情報を盛り込んでいくと、項目の数は約20〜30個程度になるのが一般的です。また、採用時には、採用単価も十分に検討する必要があります。エンジニアの採用競争が激化する中で、採用単価が上昇しやすい傾向を理解し、適切な報酬を策定しましょう。
応募者の面接を行う
応募が来た場合には、面接へと進みます。面接では、主に応募者の人物像とスキルの2点を確認します。人物像の確認では、応募者の過去の経験や企業理念への共感度、コミュニケーション能力を評価していきましょう。また、スキルの評価では、これまで関わったプロジェクトの内容を重視し、問題解決能力があるか、即戦力となるかを判断していきます。
面接は、選考だけを目的とするのではなく、企業と応募者の相互理解を深める場という目的もあります。そのため、応募者からも意見や質問ができるようにしておく必要があります。リラックスした雰囲気で応募者の不安を解消し、企業の魅力を伝え、採用プロセスを円滑に進められるように努めましょう。
内定者のフォローを行う
内定を通知した後から承諾までの間に期間が開く場合は、内定者のフォローを行うことも重要です。承諾率を高めるためにも、内定者と連絡を取り続けることをおすすめします。例えば、予定されている部署の現場エンジニアとの交流や食事会を企画するなどの方法が有効です。
経営陣や人事部門とのやりとりだけでは、本心を打ち明けられない人もいます。現場の従業員との交流であれば、実務が始まる前の不安を取り除くことができ、面接中に質問できなかったことを聞くこともできるでしょう。
内定者が入社後にスムーズに業務を始められるよう、入社直後のオンボーディングプログラムの充実も不可欠です。たとえば、会社の文化や開発環境、各プロジェクトの概要を丁寧に伝えることで、内定者が新しい職場に適応しやすくなります。また、技術面のサポートに加え、チームメンバーとの交流の機会を設けることも効果的です。例えば、早期に小規模なプロジェクトに参加させたり、オリエンテーションを通じてメンバーと顔を合わせる時間を持つことで、チーム内での信頼関係を育む良い基盤を築けます。
さらに、定期的な1on1ミーティングの実施も重要です。上司や人事担当者が内定者と定期的に面談を行い、業務の進捗状況、課題、キャリアの希望について話し合います。このような対話を通じて、早期に問題を発見し、適切なサポートを提供することができます。
人事が知っておきたいエンジニア採用の6つのポイント
人事が知っておきたいエンジニア採用には、以下の6つのポイントがあります。
- 応募者のニーズを汲み取る
- エンジニアに対して提供できることを考える
- IT部門やエンジニアと共同で採用を進める
- 状況により募集要項を調整していく
- エンジニア採用に強みのある媒体を利用する
- 情報発信量を増やす
それぞれについて、詳しくみていきましょう。
応募者のニーズを汲み取る
エンジニア採用において、応募者のニーズを理解することは重要です。 応募者が求める条件や魅力を把握し、それに合った提示ができるかがカギとなります。
エンジニアは、企業の文化や成長機会、報酬体系など多様な要素を重視しています。 応募者のニーズを汲み取り、適切なアプローチを行うことが成功につながります。
エンジニアに対して提供できることを考える
応募者のニーズを理解することで、エンジニアに対して提供できることを把握し整理することができます。例えば、技術やキャリアの成長を促進するための環境を整えて、エンジニアにとって魅力的な会社であることを示すことができます。
さらに、自社の特長を生かしたアピールを行うことで、エンジニアに対する効果的な貢献が実現します。エンジニアが求める要素を踏まえた戦略により、採用活動を効果的に進めることが可能です。
IT部門やエンジニアと共同で採用を進める
エンジニア採用をするときには、IT部門と共同で採用を進めることが大切です。採用要件は、配属予定先の上長や人事担当者だけでなく、関係者全員で確認しておきましょう。もし、認識にズレが生じたまま進めてしまうと、人材のミスマッチが起こるなど、採用のプロセスがスムーズに進まなくなる恐れがあるためです。
そのため、計画を立てる段階から、人事担当者と現場が情報を共有し、意見を交換しあい、現場のニーズを深く理解する必要があります。求めるエンジニア人材の資格や提供可能な報酬条件、社内での役割分担などは、採用計画の段階できちんと確認し、同意を取っておきましょう。
状況により募集要項を調整していく
エンジニア採用では、採用の進捗状況に応じて、募集要項を調整していくことも大切です。採用活動を始めてしばらく経っても、期待通りの人材が応募してこない、あるいは応募者が少ないという事態が起きることも少なくありません。うまくいかないときには、人材の要件設定やアプローチ方法、採用方法を見直していきましょう。
例えば、採用活動を実施して「求める人材」と「採用可能な人材」の間に差があれば、採用条件を広げていくことも検討する必要があります。新たなターゲットとして、これまで意識していなかった人材を迎え入れるのも有効です。
目指す人材との接点を増やす目的で、新しい採用方法を検討することも重要です。例えば、これまで求人広告を出稿していた媒体以外にも、人材派遣会社やエージェントを活用するなどの方法を検討しましょう。ダイレクトリクルーティングや従業員の紹介といった新しい方法を試すことも一案です。また、企業の認知度向上のためのプロモーション活動も積極的に行いましょう。採用の成果状況を踏まえ、臨機応変に対応していくことで、結果につながりやすくなります。
エンジニア採用に強みのある媒体を利用する
エンジニア人材を探すときには、エンジニア採用に特化した媒体や、強みのある媒体を利用して情報発信することも大切です。闇雲に求人広告を出すだけでは、有能な人材の確保はできません。また、エージェントを通じてエンジニアを探す方法もあります。ただし、エージェント側にエンジニアに関する知識や経験がない場合、目指している人材とは異なる人材を紹介される場合もあるため、注意が必要です。リスクを減らすためにも、エンジニア専門のエージェントへの相談をおすすめします。
そして、最近はX(旧Twitter)やFacebook、InstagramといったSNSを用いた採用もポピュラーになっています。特に若年層エンジニアはSNSの利用率が高いため、SNSでの情報提供はエンジニアの採用に有効な媒体だと言えるでしょう。適切な採用チャネルの選定が、エンジニア採用に効果的です。
情報発信量を増やす
情報発信量を増やすことは、応募者を増やすことにも繋がります。自社の求人情報やエンジニア向けの具体的な内容をSNSやWEBサイトで積極的に発信することで、求める技術を持ったエンジニアにアプローチできます。
また、情報を定期的に更新し、効果的に発信することで、転職を考えるエンジニアの注目を集めるでしょう。結果として、採用活動の効果を高めることが可能です。
まとめ
今回の記事では、エンジニア採用の事前準備と採用の流れについて詳しく解説してきました。人事担当者として、採用のステップをスムーズに進めるためには事前準備が非常に重要です。本記事で紹介した内容を参考に、自社の求めるエンジニア採用を実現させましょう。
もし、採用活動が長期化したり、上手く行かない場合、外部人材に頼ることも検討してみてはいかがでしょうか?その場合、エンジニア専門の派遣会社に相談してみるのも1つの手です。派遣会社は、あなたの企業が必要とする専門知識や経験を持つエンジニアを社内から見つけ出し、人材確保を効率的に進めるサポートが行えます。正社員の採用に拘る部分と、ビジネスを前に進めるために必要な人材の確保を外部に求める部分と、分けて考えることも必要です。ITエンジニアについて不明点や困ったことがあれば、エンジニア専門の派遣会社ラクスパートナーズへ、気軽に相談してみてください。
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